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某神社に赤い蝋燭を立てると海が荒れる

昔海沿いにある社のふもとで蝋燭を売って暮らしを立てていた年寄り夫婦がいた。
参拝客はそこでろうそくを買い、社に供えていったという。
ある晩、爺さんが海岸を歩いていると赤ん坊をみつけた。

この赤ん坊には普通の人間とは違い足がなく、代わりに魚のひれがついており、どうやら人魚の子であるらしかった。
しかし、子供のいない夫婦はその赤ん坊を海神からの授かりものだとして、大事に育てることにした。
やがて人魚の赤ん坊はすくすくと育ち美しい娘になり、夫婦の仕事を手伝って蝋燭に絵を描くようになった。
その絵が非常に見事なことと、娘の美しさが評判になりろうそくは飛ぶように売れた。
やがて社には国中から参拝者が集まるようになり、さびれた漁村は大いに活気づいたそうだ。

あるとき噂を聞きつけた香具師が江戸からやって来た。
その香具師は一目で娘の正体を見破り、娘を売らないかと夫婦に持ちかけた。
始めはかたくなに拒んだ夫婦であったが、人魚は不吉なものだという香具師の言葉と、なによりすさまじい大金に目がくらみ娘を売ることを承諾してしまう。

この話を聞いた娘は、どうか自分を売らないでくれと泣いて頼んだが、金に目のくらんだ夫婦は聞く耳を持たず娘を香具師に引き渡した。
それでも娘は連れて行かれる寸前までろうそくに絵を描き続け、残されたろうそくの中に一本だけ真っ赤に塗られただけのものが混じっていたそうだ。

おそらく最後まで絵を描き続けた娘が最後の一本に残った絵具を塗りつけたのだろう。
それを見て、娘が急に不憫になった夫婦は、その蝋燭を社に供えて娘を供養することにした。

するとその晩、海が荒れて多くの船が海に沈んだ。
乗っていた人間は誰一人助からなかったそうだ。
沈んだ船の中には娘を乗せた香具師の船も混ざっていたという。

その後、あたりは急速にさびれ、社の存在も忘れ去られてしまったが、今でも赤いろうそくを備えると海が荒れるため漁師の間では禁忌となっているらしい。
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